今、私はハイパーケア(SAP S/4HANA導入直後の集中支援期間)からの運用保守引継ぎ現場にいる。5月末までの引継ぎ期間、まさにリアルタイムで現場を歩いている。
その立場から、「COの問い合わせはJouleで解決できるのか」を正直に考えてみた。
私のバックグラウンドと、今感じている不安
私はSAPのFI(財務会計)領域を長く担当してきた。4.6CからECC6.0を経て、標準機能やマスタテーブルの動きはある程度頭に入っている。COについても「なんとなく把握できている」という感覚はあった。
だから今回のCO運用保守引継ぎの話を聞いたとき、最初はそれほど不安ではなかった。
しかし、一歩現場に踏み入れると話が違った。
S/4HANA。クリーンコア。Universal Journal。
クリーンコアとは、アドオン(カスタム開発)を必要最小限に抑え、ほぼSAP標準の機能だけで動かす設計思想だ。ECC6.0の時代は「お客様の要望に合わせてアドオンで対応」が当たり前だったが、S/4HANAではそれが大きく変わっている。
Universal Journalという考え方も頭ではイメージできる。FIとCOを統合した単一の仕訳テーブル(ACDOCA)で全ての会計データを管理するという概念だ。
だが、体感(経験値)としてピンと来ていない。
これが正直なところだ。知識として知っていることと、現場で即座に動けることの間には、大きな溝がある。
Jouleに期待したいシーン
そんな状況だからこそ、Jouleへの期待は具体的だ。
① バッチ処理のエラー原因分析
今まさに直面しているのが、月次の締め処理での問題だ。
支払関連の通知書を処理する夜間バッチが、数十万件の伝票データを処理するのに5時間かかっている。これが改善できるかどうか、原因すら特定できていない状況だ。
こうしたケースでJouleに期待したいのは、本番データを直接見ながらの分析だ。
通常のAI(ChatGPTやClaudeなど)は、システムの外側からしか情報を受け取れない。「こういうエラーが出ています」と人間が言語化して伝えるしかない。
Jouleは違う。SAP内のデータに直接アクセスして分析できる。
テーブルのINDEX利用状況は適切か。並行して走っているバッチとの競合はないか。どのプロセスがボトルネックになっているか——こうした調査をJouleが実態に迫って行い、原因と対応案を提示してくれるなら、運用保守の精度とコストは大幅に改善できると感じる。
② ノウハウの蓄積
問い合わせやエラーへの対応を、Jouleとの壁打ちを通じて行うことで、対応履歴がナレッジとして蓄積されていく。
担当者が変わっても知識が引き継がれる。「あのとき何が起きたか」を調べ直す工数が減る。長期的に見れば、これが一番大きな価値かもしれない。
それでも、Jouleでは届かない部分がある
一方で、Jouleが万能だとは思わない。
お客様との折衝・交渉がその最たるものだ。
「このバッチ、改善には費用がかかります」「今月の締めは遅延が発生します」——こうした伝え方一つで、お客様との関係性は変わる。どんな言葉を選ぶか、どのタイミングで伝えるか、相手の表情や温度感をどう読むか。
Jouleは、その場で使う言葉の候補を出してくれるかもしれない。背景情報を整理してくれるかもしれない。
だが、言語化されていないことを汲み取ることはできない。
相手が「早急に」と言いながら実は「でも品質は落とさないでほしい」と思っている——そういった行間を読む力は、人間にしかない。
お客様との折衝の場に、人間が必要な理由はここにある。
ECC6.0の知識がJouleを使いこなす鍵になる
もう一つ、現場で気づいたことがある。
ECC6.0をある程度知っていると、Jouleとの相談がしやすい。
「ECC6.0ではこう動いていたが、S/4HANAではどう変わったのか」という問いかけができるからだ。前提知識がある分、Jouleへの質問が的確になり、返ってくる答えも使いやすくなる。
逆に言えば、SAPをほとんど知らない状態でJouleを使っても、その答えを正しく解釈できない可能性がある。
これは前回の記事でも触れた点だが、今の引継ぎ現場で改めて実感している。JouleはSAPの知識を「ゼロにする」ツールではなく、「持っている知識を増幅する」ツールだ。
まとめ
| 場面 | Jouleの期待値 |
|---|---|
| バッチ処理の原因分析 | ✅ 本番データへの直接アクセスが強み |
| エラー調査・壁打ち | ✅ 通常AIより精度が高い可能性 |
| ノウハウの蓄積 | ✅ 長期的な価値が大きい |
| お客様との折衝・交渉 | ❌ 言語化されない部分は人間が担う |
| 前提知識ゼロでの活用 | ⚠️ SAP知識がないと答えを解釈できない |
S/4HANA×クリーンコアという新しい環境で、Jouleがどこまで頼りになるか——私自身、まだ答えを持っていない。
だが、「本番データを見ながら一緒に考えてくれるパートナー」としてのJouleには、今この現場で一番期待している。
実際に使い込んだら、またリアルな話を書こうと思う。
(このシリーズでは、SAP×AI×COの現場リアルをお届けしています。)

コメント