ストロングポイントは、変化する ── 自暴自棄だった私に、上司がくれた言葉

先日、プレイヤーとリーダーを行き来してきた話を書いた。その終わりのほうで、「強みは移り変わっていく」という気づきには、かつてある人からもらった忘れられない言葉がきっかけになっている、と触れた。その話を、また別の機会にと書いた。今日は、その言葉の話を書こうと思う。

少しだけ、苦い話だ。仲の良かった人にひどい態度を取ってしまった、私の失敗の話でもある。それでも、あのとき誰かがかけてくれた一言で、人は立ち上がれることがある。そのことを書いておきたい。

目次

中途半端なタイミングで、開発現場に着いた

三年ほど前のことだ。私は十年続けてきたリーダーの席を降りて、「人が足りない」という理由で、あるシステムのテスト中の開発現場に着任した。

プロジェクトの途中、それも終盤に近い、中途半端なタイミングでの合流だった。すでに出来上がっている流れの中に、後から一人だけ入っていく。正直、不安しかなかった。

救いだったのは、以前からの縁で顔見知りが数人いたことだ。そのうちの一人が、その現場のリーダーを務めていた。気心の知れた相手がまとめ役にいる。最初のうちは、それで安心して仕事に入っていけた。

「自分はわかっている」という思い込み

ところが二、三か月して、距離が近いがゆえのなれ合いが出てきたのだと思う。私は、自分のなかにある思い込みに気づけていなかった。

「リーダーを十年やってきた自分は、誰よりもリーダーの意図がわかる」——心のどこかで、そう思っていた。だから、その現場のリーダーから指示を受けるたびに、意図がうまくくみ取れない自分に苛立った。それは指示というより、言葉足らずな命令に聞こえた。

今ならわかる。サービスインに一日の遅れも許されない現場だった。彼は上層部から日々降ってくるプレッシャーに耐えながら、その意図を自分なりに租借し、オブラートに包んでメンバーに伝えていた。私に「言葉足らず」に見えていたのは、彼が背負っていたものの大きさの裏返しだった。当時の私は、そこに思いが至らなかった。

重箱の隅をつついた日

意図をくみ取れない苛立ちは、いつしか、いち担当としてふてくされた振る舞いになって表に出るようになった。それが常態化していった。あんなに気心の知れた相手だったのに、私はリーダーの気持ちに寄り添えなくなっていた。

そしてある日のミーティングで、私は彼に反論を繰り返した。本筋ではない、重箱の隅をつつくような意見ばかりをぶつけた。建設的な議論ではなかった。ただ、自分のなかにたまった感情をぶつけていただけだった。

仲の良かった人に、あんな態度を取るべきではなかった。これは、相手がどうということではなく、私自身の未熟さの問題だった。

別の現場へ——直属の上司に、正直に話した

その一、二週間後、私は別のお客様先へ移るよう指示を受けた。開発の途中だったが、そういう判断になった。

ここで一つ補足しておくと、衝突した現場のリーダーは、私の直属の上司ではなかった。私には、自分の会社に別の直属の上司がいた。移動の前に、その上司と話す機会があった。現場の細かい事情まで知っているはずはない、と思いつつ、私は今の自分の状態を正直に打ち明けた。あの頃の私は、半ば自暴自棄で、自信もすっかり失っていた。

「ストロングポイントは、変化する」

黙って聞いていた直属の上司は、こんなことを言ってくれた。言葉は、今でもよく覚えている。

人は成長の過程で、ストロングポイントが変化していきます。昔ストロングポイントだったこと、自分でストロングポイントだと思っていたことが、そうでなくなっていくこともあります。でも、そういうときでも、別のスキルに芽が生え、育って、気づいたころには新しいストロングポイントが出てきているものです。あなたは、あなたのストロングポイントで、今こそ闘うときだと思います。

リーダーという、長年自分の強みだと思ってきたものにしがみつき、「自分はわかっているはずだ」と空回りしていた私に、その言葉はまっすぐ刺さった。強みは、握りしめておくものではない。移り変わっていくものなのだと。そして、今の自分にもう一度、自分の強みで立ち向かう番が来ているのだと。

あの言葉が、次の現場に私を立たせた

この言葉をもらったあと、私が向かった先が、のちに属人化との戦いを書いた、あの運用保守の現場だった。

もしあのとき、あの言葉をもらえていなかったら。私はおそらく、直前の現場での失敗をずっと引きずったまま、次の現場でも自信を持てずにいただろう。属人化を解きほぐし、メンバーが育つ場をつくるあの仕事で、自分の強みを出し切ることは、きっとできなかった。

新しい現場で私が発揮できたのは、皮肉なことに、十年やってきて当たり前になりすぎて、自分では強みだと意識していなかった「チームを率いて人とプロセスを動かす力」だった。リーダーの席にしがみついていた頃には見えなかった強みが、降りて、つまずいて、立ち上がったあとに、別のかたちで効いてきた。一年半後、チームの空気が変わった日のことを思うと、あの言葉は確かに、私を次の場所に立たせてくれた。

強みは握りしめるものではなく、気づくもの

あれから何年か経って、思うことがある。自分の強みを、ひとつの形で握りしめていると、それが通用しなくなったとき、人はもろくなる。私がそうだった。リーダーという強みにしがみついて、それが効かない現場で、空回りして、近くの人を傷つけた。

でも、強みは移り変わっていく。古いものが薄れていく裏で、気づかないうちに別の芽が育っている。大事なのは、新しい武器を探し続けることと同じくらい、移り変わった自分の強みに、その都度きちんと気づいてやることだ。あの直属の上司は、それを私より先に見抜いて、言葉にしてくれていた。

もし今、慣れない場所でつまずいて、昔の自分の強みが通用せず、自信を失っている方がいたら。あなたの強みは、消えたのではなく、形を変えている途中なのかもしれない。そう思って、もう一度顔を上げてもらえたら嬉しい。

同じような現場に立つ方の、何かのヒントになれば嬉しい。記事へのご感想やご意見があれば、お問い合わせフォームからお寄せいただけると励みになる。

(このカテゴリでは、SAP運用保守チームのマネジメントについての実体験をお届けしています。)

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この記事を書いた人

SAPコンサルタントとして35年以上、数多くの現場を歩き続けてきました。
プロジェクトの裏側、現場で学んだこと、失敗と気づきをここに綴ります。
投資・旅行・フルマラソン。まだまだ現役で走り続けています。

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