SAP試験、こうやって乗り越えた——100点の呪縛と、2度目の受験

前回の記事で、始末書を書いたところまで話した。

SAP認定試験に合格したのに、1問ミスで始末書。そこで終わりにするつもりだったが、この話には続きがある。

数年後に発覚した「真相」と、転職後に自分から挑んだ2度目の受験の話だ。

目次

数年後に発覚したこと

始末書を書いてから数年が経ったころ、ひょんなことから当時の経緯が明らかになった。

「100点で合格せよ、さもなくば始末書」——あれは会社の方針ではなかった。当時の現場リーダーが、SAP社との契約交渉の場で「メンバー全員を100点満点で合格させます」と言い切っていたのだ。

チームを鼓舞するために、あるいは会社への印象を良くするために、そう口にした。現場リーダーの独断だった。

それを知ったとき、正直、複雑な気持ちになった。

私は長い間、「会社がそういう命令を下した」と思い込んでいた。理不尽な要求をする組織への不信感を、ずっと胸の中に抱えていた。その不信感の根っこが、実は一人の人間の独断から来ていたと知っても——特に何かが変わるわけでもなかった。

怒りをぶつける相手も、謝罪を求める場面もない。ただ、「そういうことだったのか」と静かに飲み込んだ。

ひとつ言えるとすれば、リーダーが「鼓舞のため」に口にした言葉が、現場のメンバーに何をもたらしたか——その現実だけは、しっかり見ておきたいと思った。

転職後、今度は自分から受けた

その後、転職した。

新しい環境で仕事を続けるうちに、ふと思った。私はずっとABAP開発を軸にこの業界を渡ってきた。モジュールを限定した専門家ではなく、開発側から様々な現場を支えてきた。だからこそ、ひとつの機能領域を体系として学んでみたいという気持ちが芽生えた。そこでFIモジュールの認定試験を選んだ。財務会計の骨格を、開発者の視点だけでなく、コンサルタントの視点からも理解したかった。

SAP ECC6.0 FIモジュールの認定試験を受けようと決めた。

今度は誰に言われたわけでもない。会社からの命令でも、現場リーダーの鼓舞でもない。純粋に、自分がそうしたいと思って申し込んだ。

動機がまったく違った。それだけで、勉強の始まり方が変わった。

それでも「100点」を目指してしまった

勉強を始めてすぐ、気がついた。

また、100点を目指している。

自分でも可笑しかった。誰も100点を求めていない。合格ラインをクリアすればそれでいい。だが、あの始末書の記憶が染み付いていた。「1問でも間違えたら」という感覚が、勉強の隅々まで顔を出してきた。

ABAP開発者として現場を渡ってきた私にとって、FIの機能知識はコードの向こう側にあるものだった。プログラムの中でテーブルを参照し、伝票を起こす処理を書いてきたが、その業務ロジックの全体像を体系として学んだことはなかった。総勘定元帳、銀行照合、債権債務の処理——コードで触れてきた概念を、今度はビジネスプロセスとして整理し直す作業が必要だった。

問題集を繰り返し解いた。苦手な箇所は何度も確認した。NetWeaverのときと同じ、記憶との戦いだった。ただ、あのときと違ったのは、「なぜこの知識が必要なのか」が自分の中に見えていたことだ。義務感ではなく、目的感で勉強できた。

2問間違えた。でも今度は違った

試験当日、会場に向かいながら、NetWeaverのときのことを思い出していた。

結果は合格。しかし、2問間違えた。

NetWeaverのときは1問ミスで始末書だった。今回は2問ミスだ。数字だけ見れば、前回より「悪い」結果になる。

だが、帰り道の気持ちはまったく違った。

達成感があった。自分がやりたいと思って始め、自分のペースで準備し、自分の判断で受けた試験に合格した。2問のミスは気になったが、それよりも「やり切った」という感覚の方がずっと大きかった。

同じ「合格」でも、こんなに受け取り方が変わるのかと思った。

「やらされ」と「やりたい」——動機が変えるもの

2度の受験を経て、はっきり感じたことがある。

試験の内容でも、勉強の量でも、合否でもなく——動機が、すべてを変える

やらされた資格は、取っても達成感がない。ミスをすれば罰になる。合格しても「やれやれ終わった」で終わる。知識は頭に入るかもしれないが、それを使おうという意欲は育ちにくい。

自分で取りに行った資格は、プロセスごと自分のものになる。2問間違えても「次は気をつけよう」と思える。合格の体験が、次の学びへの入口になる。

これは資格に限った話ではないと思う。現場での学びも、スキルの習得も、同じ構造をしている。

100点の呪縛は、今もどこかに残っている

ひとつ、正直に付け加えておく。

FI試験に合格した後も、「100点を取らなければ」という意識は完全には消えなかった。2問間違えたことが、しばらく気になり続けた。

始末書を書いた体験は、それほど深く刻まれていた。

現場のリーダーが鼓舞のために口にした一言が、部下の心に何年も残る。マネジメントの言葉は、思っている以上に長く、深く、人に影響する。それもこの経験が教えてくれたことだ。

次回は、「資格を取って、現場は変わったか」——2度の取得後に感じた、現実の話をしたいと思う。

同じような現場に立つ方の、何かのヒントになれば嬉しい。記事へのご感想やご意見があれば、お問い合わせフォームからお寄せいただけると励みになる。

(このシリーズでは、SAP認定資格とキャリアのリアルをお届けしています。)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

SAPコンサルタントとして35年以上、数多くの現場を歩き続けてきました。
プロジェクトの裏側、現場で学んだこと、失敗と気づきをここに綴ります。
投資・旅行・フルマラソン。まだまだ現役で走り続けています。

コメント

コメントする

目次