なぜ私はSAP資格を取ったのか——10年以上前の正直な話

「SAP認定資格を持っているか」と聞かれると、少し複雑な気持ちになる。

持っている。取った。だが、その取り方と、取った後に起きたことを正直に話すと、資格というものの見え方が少し変わるかもしれない。

今回は、13年前の話をしようと思う。

目次

きっかけは「自分の意志」ではなかった

SAP認定資格を取ろうと決めたのは、自分からではない。

当時、SAP社と直接契約を結ぶプロジェクトに携わることになった。SAP社のパートナー認定の条件として、担当コンサルタントがSAP認定資格を保有していることが求められた。つまり、取らなければその案件に関われなかった。

自分から「資格で差をつけよう」と思ったわけでも、「知識を整理したい」と思ったわけでもない。求められたから取った、というのが正確なところだ。

これは恥ずかしいことでも何でもないと今は思う。現場にいる多くのコンサルタントが、似たような経緯で資格を取っているはずだ。

SAP社の合格ラインと、会社の要求

SAP認定試験には合格ラインがある。当時は7割正解すれば合格だった。

SAP社はそれで十分だと言った。

だが、当時所属していた会社は違うことを言った。

「10割、つまり100点で合格すること。100点でなければ始末書を提出せよ」

今でも信じられないような話だが、これが実際に言い渡された命令だった。

記憶との戦い

当時の試験は、多肢選択式の暗記ベースだった。SAPの機能仕様を問う問題が並び、正しいものを選ぶ形式だ。

現場で長く働いてきた分、実務の感覚はある。だが試験の問い方は現場の感覚とは少し違う。「この設定項目は次のどれに当たるか」「このフローの正しい順序は」——それを言語化し、体系として頭に入れ直す作業が必要だった。

100点を目標にするというのは、つまり全問正解を目指すということだ。受験勉強のような日々を過ごした。問題集を繰り返し解き、苦手な箇所を何度も確認した。

試験当日、自分なりの手応えはあった。

1問、間違えた

結果は合格だった。7割のラインは、余裕を持って超えていた。

だが、1問だけ間違えた。

SAP社の基準では問題なく合格。しかし会社の要求は100点。1問のミスは、会社の基準では「失敗」だった。

そして、実際に始末書を書いた。

試験に合格したのに、始末書を書く。自分でも、なんとも不思議な体験だと思いながら書いた。精神的にしんどかった。合格の達成感より、その後の徒労感の方が長く残った。

取得後、現場は変わったか

正直に言う。思ったほど変わらなかった。

お客様からの見られ方が劇的に変わったわけでもなく、案件がぐっと増えたわけでもない。「資格持ってます」と言える場面が増えた程度だった。

むしろ現場では、「どんな現場を経験してきたか」「どんな課題を解決してきたか」の方が、はるかに重く見られると感じた。35年以上経った今でも、その感覚は変わらない。

資格は、入口を開くための鍵にはなる。だが、その先に進むための力は別のところにある。

2025〜2026年、試験の景色が変わった

あれから13年。SAP認定試験は大きく変わった。

まず、有効期限が設けられた。以前は一度取れば長期間有効だったが、現在は12ヶ月ごとに更新アセスメントが必要になった。更新しなければ資格は失効する。「持っているだけ」では通用しない仕組みになった。

試験形式も変わった。暗記ベースの多肢選択式から、SAPシステムのシミュレーション上で実際に操作するパフォーマンスベース試験へ移行しつつある。オープンブック——つまり試験中にSAP公式ドキュメントやAIツールを参照してよい——というスタイルだ。

私がやったような「全問暗記で100点を目指す」受験スタイルは、もう通用しない。問われているのは「知っているかどうか」ではなく、「判断できるかどうか」になった。

この変化は、資格の意味そのものを変えていると思う。

暗記から判断へ——それは現場が求めてきたことと同じだ

現場で長く働いてきた人間として言えば、この変化は正しい方向だと感じる。

SAPの現場で本当に必要なのは、暗記した知識の量ではない。状況を読み、判断し、行動できる力だ。AIが使えるなら使えばいい。ドキュメントを参照できるなら参照すればいい。そのうえで「どう判断するか」が試されるべきだ。

13年前、私は1問間違えて始末書を書いた。それが何を意味していたかは、今でもよくわからない。だが少なくとも、「100点を取ること」が「現場で使えること」と同じではないことは、あの体験が教えてくれた。

資格とは何か。どう向き合うべきか。このシリーズでは、現場35年の視点から、もう少し掘り下げていきたい。

同じような現場に立つ方の、何かのヒントになれば嬉しい。記事へのご感想やご意見があれば、お問い合わせフォームからお寄せいただけると励みになる。

(このシリーズでは、SAP認定資格とキャリアのリアルをお届けしています。)

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この記事を書いた人

SAPコンサルタントとして35年以上、数多くの現場を歩き続けてきました。
プロジェクトの裏側、現場で学んだこと、失敗と気づきをここに綴ります。
投資・旅行・フルマラソン。まだまだ現役で走り続けています。

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