以前、SAPのCO専門書が日本語にはほとんど無い、という話を書いた。CO担当になって情報を探したとき、日本語の壁にぶつかった話だ。
では、英語ではどうか。実は、英語には決定版と呼べる専門書が、何冊も揃っている。日本語に無いものが、英語にはきちんと存在しているのだ。それなのに、日本のSAPコンサルで英語の専門書を読んでいる人は、私の周りを見てもそう多くない。なぜだろうか。今日はその話を書いてみたい。
日本語に無いものが、英語には揃っている
SAPには「SAP PRESS」という公式色の強い技術書シリーズがある(ドイツのRheinwerk Publishingが出している)。ここには、CO(管理会計)に関する専門書が、領域ごとに揃っている。たとえばこういった本だ。
- Controlling with SAP S/4HANA: User Guide(Janet Salmon, Stefan Walz 著)── CO全体を扱うユーザーガイド。原価センタから製造・販売・会社間取引まで網羅
- Product Cost Controlling with SAP S/4HANA(John Jordan, Janet Salmon 著)── 製品原価計算(CO-PC)の専門書。600ページを超える厚さ
- Margin Analysis with SAP S/4HANA(Kathrin Schmalzing 著)── 収益性分析(旧アカウントベースCO-PA、現マージン分析)を扱う一冊
- Material Ledger in SAP S/4HANA(Paul Ovigele 著)── S/4HANAで必須化したマテリアルレジャー(ML)の専門書
日本語では「CO」とひとくくりにされ、入門書すらわずかしかない領域が、英語ではこれだけ細分化され、それぞれに分厚い専門書が存在する。この差は、正直、大きい。
仕様を作っている当事者が、本を書いている
もうひとつ、英語の専門書で見逃せないのが「誰が書いているか」だ。
先に挙げた本の著者、Janet Salmon(ジャネット・サーモン)は、SAP本社で管理会計(Management Accounting)のチーフプロダクトオーナーを務めている人物だ。平たく言えば、COという製品の仕様を作っている、まさにその当事者である。その人が書いた本に、COがどういう思想で設計されているかが書かれている。
これは、翻訳や又聞きでは決して得られない深さだ。「なぜこの機能はこういう作りなのか」を、作った本人の言葉で読める。日本語の入門書とは、情報の層がまるで違う。
では、なぜ日本のコンサルは読まないのか
これだけの本があるのに、なぜ読まれないのか。私なりに、いくつか思い当たる。
ひとつは、単純に英語の壁だ。技術書を英語で読むのは、確かに腰が重い。ひとつは、日本語の情報と現場の経験で、なんとかやってこられたこと。私自身もそうだった。困ったら先輩に聞き、過去のドキュメントを漁り、手探りで覚える。それで回ってきたから、わざわざ英語の本まで手を伸ばす動機がなかった。
そしてもうひとつ、案外大きいのがそもそも存在を知らないことだ。日本語のSAP書籍コーナーしか見ていなければ、英語にこれだけの専門書があることに、気づきようがない。情報がドイツ語・英語で先に整備され、日本語に降りてこない——というSAPの構造的な事情も、ここに重なっている。
それでも、私は手に取ってみた
断っておくと、私は英語が達者なわけではないし、CO専門書を完璧に読みこなせるわけでもない。ABAP開発を軸に歩いてきて、FIを経て、今ようやくCOの運用保守に向き合っている身だ。
それでも、日本語で答えが見つからないなら、ある場所まで取りに行くしかない。そう思って、英語の専門書を手に取ってみた。すると、先日書いたS/4HANA移行でのCOの変化——Universal Journalやマテリアルレジャーの必須化といった話が、体系立てて整理されているのが分かった。現場で断片的に掴んでいたことが、一本の筋でつながっていく感覚があった。
英語の壁の、越え方
とはいえ、600ページの英語の本を頭から精読する必要はない。私がやっているのは、こんな読み方だ。
- 目次と、今困っている章だけを読む。全部読もうとしないことが、続けるコツだ
- 電子書籍を使う。SAP PRESSの電子版はDRMフリーで、検索もしやすい。日本のAmazonからも取り寄せられる
- AI翻訳を併用する。分からない段落は、今ならAIに訳させて要点を掴める。英語の壁は、昔よりずっと低くなっている
「英語だから」と最初からあきらめるには、もったいない情報が、そこにはある。
日本語に無いなら、英語に取りに行く
2027年問題でS/4HANAへの移行が本格化するほど、CO周りの「日本語で答えが見つからない」場面は増えていくと思う。そのとき、英語の専門書まで手を伸ばせるかどうかは、地味だが確かな差になる。
日本語の良書がないと嘆くだけでなく、答えのある場所まで取りに行く。完璧に読めなくてもいい。必要な一章を、必要なときに開く。それだけでも、現場での足腰は変わってくる。私自身、まだその途中にいる。
同じような現場に立つ方の、何かのヒントになれば嬉しい。記事へのご感想やご意見があれば、お問い合わせフォームからお寄せいただけると励みになる。
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