定例作業を「チームの財産」にした方法 ── 見える化・自動化・そして全員で手を動かした日々【第4回】

日次共有会を変え、チームの空気が少しずつ変わり始めた。次に私が着手したのは、このチームが抱える本丸——定例作業の属人化解消だった。

目次

まず「見える」にした

A君の頭の中にある定例作業を、チームの財産にする。そのための最初の一手は、見える化だった。

使ったのはフロー作成ツールだ。定例作業の全体像——何をどの順番で、どのデータを使って、どこでお客様と何を確認するのか——を1枚の資料にまとめることにした。

このとき大事にしたのは、私やA君だけで作らないことだった。

みんなでワイワイ言いながら書き上げた。

「ここってどういう意味?」「このデータ、どこから来るの?」——チームメンバーが率直に聞き、A君が答える。その会話の中で、初めて全員が定例作業の全体像を「自分ごと」として理解し始めた。

A君も、不思議と素直に話してくれた。問い詰められているのではなく、一緒に作っているという場の空気がそうさせたのだと思う。

2本柱で進めた

見える化と並行して、改革の2本柱を動かし始めた。

柱① 手作業をなくす(自動化)

定例作業の中には、毎回同じデータを手で抽出し、同じフォーマットに貼り付けるという繰り返し作業があった。これを自動化することにした。

他チームのメンバーが協力してくれた。データ抽出の自動化、抽出したデータをお客様提出資料に反映するツールの開発——地道な作業だったが、少しずつ形になっていった。

柱② 他メンバーでも対応できるようにする

ここで起きたことは、私の力量とは関係ない話だ。正直に書く。

他メンバーが、自分たちで動いた。

まず、各自が見よう見まねで手順書を詳細化し始めた。実際に手を動かしながら「ここまでは書けた。でもここから先がわからない」「なぜこの手順が必要なのかが理解できない」——そういう具体的な問いを、自分たちの言葉でA君にぶつけていった。

これが効いた。

「教えてください」ではなく、「ここまでは理解した。この部分だけ教えてほしい」という問いかけは、A君の受け取り方がまるで違った。自分たちが本気で何とかしようとしている、そのチームの思いがA君にも伝わったのだと思う。A君は、チームの仕事として本気で向き合ってくれるようになった。

リーダーとして私にできることには限界がある。チームが自分たちで動き始めたとき、初めて本当の変化が生まれる——この仕事でそれを実感した。

半年後、時間が縮み始めた

すぐには変わらなかった。

最初の数ヶ月は、やっていることもぎこちなく、目的もうっすらわかる程度で手探りだった。自動化ツールの精度が上がらず、結局手作業が残ることもあった。

それでも続けた。

取り組みを始めて半年ほど経ったころ、変化を感じ始めた。定例作業にかかる時間が、少しずつ縮んできていた。A君以外のメンバーが「あの作業、私でもここまでならできます」と口にするようになってきた。

小さな変化だった。でも、確かな変化だった。

属人化は、その人のせいではない

ここで少し立ち止まって書いておきたいことがある。

この一連の取り組みを通じて、私はA君を「問題のある人」として扱ったことは一度もない。

A君は、誰よりも真剣にこの仕事に向き合ってきた人だ。長い時間をかけて知識を積み上げ、お客様との信頼を築き、誰も知らない作業を一人でこなし続けてきた。その結果として属人化が生まれたのであって、それはA君の責任ではない。

属人化はチームと組織の問題だ。

仕組みがなかった。引き継ぎの設計がなかった。チームで共有する文化がなかった。それが積み重なった結果だ。

だから変えるべきは仕組みであり、文化であって、人ではない——私はずっとそう思いながら動いていた。

次回:1年半後の声のトーンが変わった日

着任から1年半が経つころ、チームに確かな変化が訪れた。

定例作業はA君以外のメンバーでも回せるようになり、日次共有会には明るい声が響くようになっていた。

そしてA君自身にも、変化があった——最終回に書く。

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この記事を書いた人

SAPコンサルタントとして35年以上、数多くの現場を歩き続けてきました。
プロジェクトの裏側、現場で学んだこと、失敗と気づきをここに綴ります。
投資・旅行・フルマラソン。まだまだ現役で走り続けています。

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