FIモジュールを担当していた頃、私はCOのことを、どこか「FIの延長」だと思っていた。
財務会計の数字さえきちんと押さえておけば、管理会計はその先に自然とついてくる——そんな感覚だった。その後、S/4HANAのCOを初めて担当するようになって、その思い込みは、根っこから覆された。
「FIさえ見ておけば」と思っていた頃
ECCの時代、私はFIモジュールを軸にやってきた。FIには財務会計の伝票があり、勘定があり、残高がある。CO(管理会計)は、そのFIの数字を原価センタや利益センタで切り分けて見るもの——くらいの理解だった。
だから、FIのテーブル(BKPF、BSEG、あのあたり)さえ頭に入っていれば、COも何とかなる。そう信じていたし、FI担当として現場に立っている分には、それで大きく困ることもなかった。
今思えば、それは「FI担当者から見たCO」の姿でしかなかった。
もっとも、それは「会社による」とも言える
ここまで「私の理解不足だった」と書いてきたが、正直に言えば、理由はそれだけではなかったと思う。COをどこまで使うかは、会社によってずいぶん違うからだ。
SAPのCO機能を積極的に活かし、原価計算も収益性分析もSAPの中で回している会社がある。一方で、COはあくまで「内部の数字を確認する仕組み」と捉え、本格的な管理会計の分析は別のツールやシステムでやっている会社も、確かにあった。後者のような現場では、SAPのCOはそれほど前面に出てこない。FIさえ見ていれば、日々はそれで回っていく。
さらに、アドオンが多くSAP標準をあまり活かしていないシステムを担当していると、CO本来のかたちが見えにくい。標準の機能が動いていないぶん、CO部分の輪郭が、どうしてもぼやけて見えていた。
だから「FIさえ見ておけば」という感覚は、私の思い込みであると同時に、環境がそうさせていた面もあった。SAP標準のCOがきちんと機能している現場に立って初めて、その輪郭がはっきり見えてきた——というのが正直なところだ。
ECCからCOを担当していた人なら、たぶん否定する
もし、ECCの時代からがっつりCOを担当してきた人が当時の私の考えを聞いたら、おそらく首を横に振っただろう。
COは、FIとの関係を押さえるだけでは、まるで足りない。むしろ、SD(販売)やMM(購買)、PP(生産)との関係をしっかり押さえないと、数字の出どころすら追えない。それがCOという領域だった。
FIの伝票は、いわば「結果」だ。その結果がどこで生まれたのか——原材料を買ったのか、製品を作ったのか、売ったのか——を持っているのは、上流のロジスティクスのほうなのだ。
業務の流れの、いちばん下流にCOはいる
あらためて業務の流れを並べてみると、はっきりする。
調達(MM)→ 生産(PP)→ 販売の受付(SD)→ 出荷(SD)→ 財務会計(FI)→ 管理会計(CO)。
管理会計は、この長い流れのいちばん最後にいる。上流のあらゆる取引で発生したコストと収益が、最後にCOへ流れ込んでくる。
だから、CO担当が見るべきは、FIの数字だけではない。その手前の、品目がどう動き、指図にどうコストが集まり、受注がどう原価に結びつくのか——その連鎖の全体だ。管理会計が「財務会計のテーブルだけ押さえればOK」にならない理由は、ここにある。
品目・指図・周期が、これほど効いてくるとは
これまで存在は知っていても、どこかで重視してこなかったものがある。品目(マテリアル)。製造指図や保全指図。そして「周期」——月末のクローズ処理だ。
S/4HANAのCOでは、製造指図がコストを集約し、その差異を期末に計算し、決済して初めて原価が確定する。配賦のサイクルを回し、マテリアルレジャーを締める。日々の取引がデータベースに溜まっているだけでは、原価はかたちにならない。
品目・指図・周期。FI担当だった頃の私がいちばん軽く見ていたところが、CO担当になった今、いちばん効いてくる。痛感している、という言葉がいちばん近い。
だから、関連図に落とし込んだ
この「つながり」を、自分の頭の整理も兼ねて、テーブルの関連図にまとめてみた。
- S/4HANA テーブル関連図【CO・管理会計】──調達→生産→販売→COの業務フローと、テーブルがどのキーで結合するかを図にした
- S/4HANA テーブル関連図【FI・会計】──会計伝票が ACDOCA に統合される、FI側の構造
COがFIの延長ではなく、価値連鎖の集約点なのだということは、図にしてみると自分でも腑に落ちた。同じようにCOを担当し始めた人が、最初の地図として使ってくれたら嬉しい。
同じような現場に立つ方の、何かのヒントになれば嬉しい。記事へのご感想やご意見があれば、お問い合わせフォームからお寄せいただけると励みになる。
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